令和4年4月7日
株式会社新潮社 御中
参議院議員 東 徹
抗議文
貴社は、貴社発行の「週刊新潮(令和4年3月22日号)」誌上において、「食い物に される『大阪ワクチン行政』 維新『最高幹部』の支援者医師が『接種2万回』濡れ手 で粟の1億円!」との標題の記事(以下「本件記事」とする。)を掲載したが、本件記 事は、恣意的に事実を曲解し極めて悪質な印象操作を行うものにほかならず、多くの人 を傷つけ苦しめたうえ、新型コロナウイルス感染症に真摯に立ち向かってくださった医 師の士気を低下させ地域医療を崩壊させようとするものであり、断じて許しがたく、こ こに厳重に抗議する。
1 本件記事の事実誤認及び不当な印象操作について
2021年5月頃は、国がコロナウイルス感染症に係るワクチン(以下、「ワクチン」 という。)の必要数を確保しているとして、特に高齢者に対してワクチン接種を促して いたところであり、実際に多くの方がワクチン接種を希望されていた。しかし、一方で、 「歯科医師によるワクチン接種のための筋肉内注射の実施に係る法的整理」がなされる など、全国的にワクチンの打ち手不足の問題は深刻を極めていた。
そのためこの頃は、病院側がワクチンを長期保管できるようにするための冷凍庫を準 備するなど、基本的な準備さえ行えば、特に支障なく基本型接種施設とすることを選択 できたのであり、「ただクリニック」の院長である多田均医師は、救急救命を行ってき た経験から、副反応についても対応が可能であるとの判断のもと、接種を希望する方に 少しでも早く接種してもらうため、冷凍庫などの必要な準備を整えたうえで自身のクリ ニックを基本型接種施設とすることを選択し、登録を受けた。
すなわち、基本型接種施設として登録を受けることで、国のシステムを使い、自らワ クチンを発注することが可能となることから、「ただクリニック」がワクチンの供給を 受けるために、第三者を介在させる必要性など全くなかったのであり、そのような極め て重要な事実について摘示のない本件記事は、不当な印象操作との誹りを免れることは できない。
実際、当初はワクチンの打ち手が不足するなどしていたため、ワクチンの供給数に余 裕があり、「ただクリニック」は、比較的容易にワクチンの供給を受けることができ、 同年7月以降に、ワクチン供給数に制限が出てきた時期も、「ただクリニック」では、 すでに供給を受けていたワクチンを用いることで、新たに供給を受ける数量を抑えつつ、 2回目の接種希望者にワクチン接種を続けることができていた。
また、同年5月24日から同年9月6日の週までに「ただクリニック」には17箱の ワクチンが供給されたが、同年5月24日から同年10月4日の週までに大阪市に供給 されたワクチンの数量は2182箱であり、「ただクリニック」に供給された数量はそ の僅か1%にも満たない。すなわち、全体でみれば「ただクリニック」に供給されたワ クチンの数量はごく一部に過ぎず、当然のことながら特別に融通を受けなければ確保で きないような異常な数量では全くない。「ただクリニック」以外の医療機関においても、 基本的な条件を満たせば、「ただクリニック」と同様に、同数量のワクチン供給を受け ることは可能であったと考えられ、その様な重要な事実の摘示がないことも明らかに不 当な印象操作である。
ワクチンは副反応の可能性があるものの、上述のとおり、多田医師は、救急救命に携 わられてきた経験から、副反応への対応は可能であると判断され、一人でも多く一日で も早くワクチン接種が進むよう、診療時間だけでなく、休日や診療時間外の時間も使っ てワクチン接種を行われていた。
我々はそのような多田医師の懸命な姿勢に感銘を受け、少しでも力になりたいとの思 いで、同年6月と7月の日曜日に1日ずつ計2日間行われた「オスカードリーム」での ワクチン接種について、ボランティアとして会場の整理など接種が順調にすすむよう協 力した次第である。
なお、本件記事には、「1 回目の接種の前に3510回分、2回目の前後に1万530 回分の供給を受けている。大型接種ありきで大量のワクチンをしいれているのではない か。」などと疑問が呈されているが、「オスカードリーム」での接種回数は、国から「た だクリニック」に供給されたワクチンのごく一部でしかなく、むしろこの会場以外での 接種回数のほうが多かった。その様な事実はきちんとした取材を行えばすぐに判明する 内容であって、要は、貴社は本件記事の方向性に反する事情については本来行うべき取 材を何ら行っていないのであり、遺憾という他ない。
2 今後の対応について
多田医師は、もとより地域医療に熱心に取り組み、コロナ禍においても、積極的に発 熱患者を診察するなどしていた尊敬すべき医師である。ワクチン接種においても、一人 でも多くの方に一日でも早くワクチンが接種できるよう、誰よりも熱意をもって一生懸 命頑張っておられた。我々は、多田医師のその熱意に共感し、ボランティアでお手伝い をさせていただいた。すなわち、多田医師は、称賛こそされるべき人物であるところ、 本件記事によっていわれのない批判にさらされることなど断じてあってはならず、その 意味でも本件記事には憤りを禁じ得ない。
また、本件記事は、「ただクリニック」の診療行為を妨害し、「ただクリニック」に通 われている多くの患者を傷つけるだけでなく、多田医師をはじめ、全国でワクチン接種 に積極的に取り組んでいただいた全ての医師の士気を低下させる極めて卑劣なもので あり、また、そのような地域に貢献する医師とともに、ワクチン接種をすすめ、新型コ ロナウイルス感染症の感染拡大を抑えようと尽力している全ての関係者を愚弄するも のであって、断じて許しがたい。
そもそも上記1に示したような事実は、真面な取材を行っていれば把握できたはずで あり、十分な事実関係の確認も行わないまま、本件記事を掲載したことは、メディアと しての倫理に反するものではないか。
本件記事のような極めて悪質な印象操作が今後も行われていくと、いわれなく多くの 人が傷つき、正当な業務が妨害されるばかりか、地域医療や社会そのものが成り立たな くなってしまうことは明らかであり、貴社には猛省を促すとともに、本件記事の撤回及 び本件記事に対する謝罪を多田医師及び当方にするよう強く求める。
以上
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